健康太一ミニコラム:2018年夏号3

健康太一ミニコラム:2018年夏号3

 2018年夏号画像
今回は、夏の暑さに負けない気功法の紹介です。日々の健康づくりの実践に、効果的な東洋医学的方法を試してみては如何でしょうか

27 夏の暑さに負けない気功法

暑がりのHさんから、夏の暑さに負けない気功法はありませんか、とお問合せをいただきました。

すぐに浮かんだのが、ニコニコ太一気功サークルでも六年ほど前に取り上げた「健身気功六字訣」、その中の「呵(フー)字訣」です。

呵字訣画像

張明亮先生、呵字訣(『健身気功六字訣』ベースボール・マガジン社より)

健身気功六字訣表紙

張明亮先生が編集執筆に参与された『六字訣』

吐気発声と簡単な動作を組み合わせた平易な気功法

六字訣は、手短かに言うと、吐気発声と簡単な動作を組み合わせた気功法です。それによって、人の臓腑を調え、体を健康丈夫にしていきます。

この六字訣の一つ、呵字訣では、まず、両掌を腰から前に差し込むようにして臍前で合わせ、それを胸前まで上げて内に返し、手の甲を向き合わせ、両掌指を下へ、フーと息を舌の上辺から吐きつつ、差し降ろします。それから、膝をゆるめ、腹前で両手をまたゆっくりと返して最初の姿勢に戻り、同様の動きを、計6回繰り返します。

言ってみれば、たったこれだけの、こみいった動作もなく、大変に易しいものなのですが、それでもこの功法を初体験したHさんは、「なにやら気持ちが落ち着いて、すっきりしました、不思議ですね」とのことでした。

なぜ、効果があるのか?

では、なぜそうなるのでしょうか……。両手を体の前で上げ下げし、フーと言うだけで、そうした効果が得られるのでしょうか……。

その背景には、東洋思想独特の考え方があります。

東洋思想については、3か月ほど前のブログでも少し触れました。

⇒ タイチ・トピックス:2つの套路で太極拳の“本質”を学ぶ十三式太極拳

その陰陽五行説を表にまとめた五行色体表(自然と人の体を5つの要素に分類したもの)によれば、呵は臓腑の心に対応し、季節は夏、気候は暑です。

では、この燃え盛る火を弱めるものは何かというと、それは水です。水は、臓腑でいうと腎。季節は冬、気候は寒です。

つまり、この呵字訣でやっている動作というのは、腎の水のエネルギーを両手で持ち上げて、熱い心の火のエネルギーを制し、フーと言いつつ、それを下降させて、火と水のエネルギーを調和させてバランスをとり、体を健康に導こうとしているわけです。

ちなみに、心の竅(体表に開かれた五臓の気が出入りする穴)は舌とされますから、フーと言うとき、舌の上と上顎の間からゆっくり息を吐くのは、この五行説に依ったものといえます。

気功法というと、なにか取り留めのない印象をお持ちの方もいるかもしれませんが、その背景に、このような東洋思想が根付いていることを知ったうえで煉功されると、その功法のめざす意味合いがより明瞭となり、楽しみもいっそう増すことになるでしょう。

火と水、陽と陰――異質なものの交流を図る!

さらに、筆者がこの功法でとりわけ面白いと思うのは、陰陽論でいうと、火は陽であり、天。水は陰であり、地。この陰陽、天地、相異なるものを交じり合せて、そこに求めるべき道がある、としている点です。天は天、地は地として、そこに隔絶され、交わらないものを見るのではなく、天と地の交流、調和を図ろうとする、そのことの大切さに魅かれるのです。

かつて易経をかじり読みしたとき、「天地否」「地天泰」という卦があることを知って、へぇ~、と思ったことがありました。天は上にあり、地は下にあり、それはそれで一つの当然な姿を現しているのではないかと思ったら、そうではなく、これでは、天と地が通じない、お互いに背を向け合って互いを認めず、物事は否、うまくいかない、というのです。

これに対し、天と地がひっくり返った地天泰は、地が上、天が下にあるにもかかわらず、お互いが互いに認め合い、交流して、泰。物事がスムーズに運び、吉占であるというのです。

また、「火水未済」「水火既済」という卦もあります。火水未済は、外卦が火で、 内卦が水で助け合う関係では無く、離れていく意味となります。これに対し、水火既済は、陽と陰が交互に並び、完成された形となります。

陰と陽が互いに助け合い、協調して、あるべき道を歩んでいくことの大切さを改めて教え諭されているようで、そこに得も言われぬ妙味を感じるのですが、どうでしょうか……。

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01 ありとあらゆるものにある開合のしくみ