えっ、20代なのに五十肩!?

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20代なのに五十肩

左腕が痛くなり、使えず困っている。早く、なんとかしてほしい……
<左腕が痛くて使えない、挙がらない……>

該 当 者: 20代 女性
該当部位: 肩、腕
訴  え: 数日前から、腕が痛くて挙がらなくなり、困っている……

<見立て>

猛烈に暑いと思うと、急に気温が下がったり、低いと思うと、暑さがぶり返したり……そんな夏から秋口にかけての異常気象のさなか、ご連絡をいただき、来院された

以前、側彎症の施療に来られたことがあり、それ以後、何かお困り事があると不定期に来院されている方である

早速、お話を伺うと――

左腕が痛くなったのは、1~2日前からで、左腕が挙がらないため、仕事にも生活にも差し支え、困っている、とのこと。まだ20代にもかかわらず、まるで五十肩のような具合なのである

腕が痛い図

腕が痛い、挙がらない……

何か、思い当たることは? とお聞きすると、腕をぶつけたとか、重い物を長時間持ったりとか、辛い思いをしたとかはなく、特には思い当たらない、とのお話

お体のほうはいかがですか、とお尋ねすると、半月ほど前に少し体調を崩し、便秘気味だったのが、ここ最近は逆に少し下痢気味、とのお返事

脾経絡の変調が影響

それで、ピンと思い当たるところがあり、早速、手首を使っての経絡チェックをしてみると、肺・大腸、脾・胃、腎・膀胱、肝経絡に変調が窺われる。FT(フィンガー・テスト)で、どの経絡が主に影響を与えているのかを調べると、脾経絡の影響が大きいと出る

チャクラをチェックすると、第三チャクラに問題のあることが窺われる

この第三チャクラは、お腹の脾、胃と関係する場所なので、やはり脾経絡が影響を与えているとみてよさそうである

直近の投稿記事などでも述べたことだが、

⇒ 暑い夏に体のあちこちがツラい……
⇒ 「脾」の季節に役立つ気功法

暑い夏に続く「土用」の季節は、消化吸収等をつかさどるお腹の問題があれこれ起きやすい時期でもある。それを反映してか、整体施療をしていても、お腹の問題を訴えられる方が少なくない

その脾の位置は、人間の体でいえば、お腹、中央で、臓器的に脾、胃(脾と胃は姉妹経絡)は、心と肺、肝と腎に周りを取り囲まれた中にあり、そこで育んだ栄養物質をこれら四つの臓器に輸布し、体全体を養う働きをもっている

しかし、何らかの原因でこの脾、胃の働きが阻害されてしまうと、体中に様々な影響が及ぶことになる

体が重だるい、脚に力が入らない、下肢の痛みや浮腫、胃部の膨満や腹鳴、消化不良、食欲不振、下痢、便秘、鼻血、心悸亢進、頭重、口の周りの発疹、血色不良や出血症状、筋(肌)肉痛などは、これに該当する

さらに、肝についていえば、肝経絡は体側を巡り、造血と関わり、筋を主(つかさど)るとされるから、これも、腕を挙げると痛いという症状にも関係している可能性がありそうである

脾経絡図

脾経絡

肝経絡図

肝経絡(『経絡十講』商務印書館より)

<施療>
乱れた気の流れを調整

以上の見立てから、施療は、主たる影響部である脾経絡への処置・施療から始めることとする

具体的には、仰臥位にて、脾経絡の気の流れをチェックし、問題箇所の補瀉調整を行なって円滑な気の疎通を図る

次いで、腹部と肝経絡部への気功ほぐし、シトリン(黄水晶)を使っての施療

さらには、側臥位での肩、首、腕の筋肉ほぐし

と、進めていった

その結果、当初の経絡やチャクラの変調もなくなったので、改めて立位で、左腕を前後、左右、斜めへと動かしみてもらうと、ある程度動かせるようになるが、特定の動きをすると、まだ痛みが残っていることがわかった

特定の動きというのは、腕を比較的真っ直ぐにして片手を前に持ち上げる動きで、これをすると、最初よりはましだが、まだ痛くてつらいのだと言う

体の使い方を改める

それを聞いて、筋肉上の問題がまだ解消できていないのかと思い、体の使い方で何か似たような動作を繰り返ししているようなことはないか尋ねてみる。すると、ハッとされたように、実は、仕事で、パソコンのキーボード入力を右手でし、左手で書類をもって肩の高さぐらいまで持ち上げ、台に載せる動きを頻繁にしているのだそうである。その動き自体はずっとしてきたことであり、これまで特に問題を感じたことはなく、それで、そのことが今回の左腕の痛みに関係しているとは思いもしなかった、とのことであった

そこで、しばし思案した後、試しに、腕の使い方を多少変えてもらうことにした

腕をまっすぐに伸ばしたまま片手を持ち上げるのではなく、まず肘を折り曲げるようにして手首を持ち上げ、それから手を、前にすっと突き出すように動かしてもらったのである

要するに、片手を前に持ち上げるという動作を、1段階でパッとやってしまうのではなく、2段階に工程を分けて、やってもらうようにした。それによって、腕の筋肉への負荷をできるだけ減らそうというわけである

そうすると、ああ、痛くない、これなら大丈夫、という返事が返ってきた。そこで、その動作を何度か繰り返しやってもらうと、腕がスムーズに動かせるのはもちろん、そのうち、当初つらくてできないといっていた腕の挙げ方でも、問題なくできるようになってきたのである

ご本人は、腕が元に戻って安心した! と大変喜ばれていた

<考察> 季節の変化、臓器の働き、体の使い方、いろいろなことが腕の上げ下げにも影響している……

現代人はとかく、物事をパーツ、パーツに分けて考え、季節の影響とか、内臓の働きとか、体を動かすこととかを、それぞれどこか別個のものとみなしがちである

腕が痛い、となると、それは、腕そのものに問題があるとして、腕がつながっている体であるとか、体の生理機能であるとか、天候、季節が及ぼす体への影響とか、といったところまでは、フツー思いを馳せない。そういうこともありそうだ

しかし、現実はどうか、というと、今回の事例がいみじくも示しているように、季節の移り変わり、天候の具合が体に影響を及ぼし、それが体の働きの具合にまで関わってくることは結構、少なくないのである

だから、季節ごとに特有の体への影響についてあらかじめ理解し、それへの対処の方法も知っておいたほうが、体の健康を維持するうえで、やはり大切なこととなる

ニコニコ太一気功サークルで最近、季節の養生功を取り上げて皆で学習しているのもそのためである

⇒ ニコニコ太一通信 2018年10月

また、体の使い方についても、できるだけ筋肉疲労を招かないような合理的な使い方にも、是非心配りしていただければと思う

これも、ニコニコ太一気功サークルの活動のなかで、理解を深めようと努力を重ねているところであるが、何気ない動きでも、やり方を変える、工夫するということをすれば、体が楽で疲れにくい、ということは結構ある

たとえば、以下は、前屈みや猫背の姿勢を真っ直ぐにする、簡単な方法について述べたものである

⇒ 前屈みや猫背の姿勢を真っ直ぐにする簡単な方法

こういうちょっとした工夫が、体の楽な運用につながるのだと思う

なお、今回、五十肩そのものについてはほとんど触れていないが、以前の投稿記事で結構詳しく取り上げているので、ご関心がおありの方は、こちらのほうも是非ご覧ください

⇒ 五十肩で日常生活にも困っている……