健康太一ミニコラム:頭がボ~として働かない、疲れてる!
若い男性から「頭がボ~として働かない、疲れている」との相談が…。“呼吸”に焦点を当てて体を調整すると、目に見えて改善が……
40 頭がボ~として働かない、疲れてる!
20代後半の男性から表題のような相談がありました。
聞くと、最近、仕事が忙しく、寝る時間も満足にとれない、とのこと。
前屈みの姿勢で頭から左肩、腕に強い緊張が…
姿勢を見ると、いかにも頭部が重い印象で、耳は肩より前に出て胸はふさがり、とりわけ左耳周辺から左肩、上腕、肘にかけて強い緊張が窺えます。
息を止めているかも…
システムエンジニアとして、左肘を机につき、屈みこんだような姿勢で、長時間働いているそうです。
「仕事中、息をしていますか?」と尋ねると、ハッとしたように、そういえば息を止めているかも……との返事です。
それで心身の不調の原因がなんとなく掴めたような気がしました。
呼吸が大きな原因に…
どういうことかというと、呼吸がうまくできていない、ということは、「頭がボ~として働かない」「疲れる」という大きな原因になり得る、ということです。
このホームページか関連ブログのどこかにも書いたような気がしますが、一般に人は、1分間に12~20回、1日に2万回ほどの呼吸をするといわれています。
ところが、そんなに沢山するにもかかわらず、呼吸の質はどうかというと、運動不足や(ご相談者が言われるような)姿勢の悪さなどから、横隔膜や胸郭をわずかに動かすだけの浅い呼吸に終始している、というのが、現代人の芳しくない傾向のように危惧します。
空気を吸い込み、取り入れる肺の容積を目一杯に使うこともなく、古い濁った空気が、体外に排出されないままに肺胞にとどまる、ということも多いのではないでしょうか。
そんなところに、仕事を期日までにテキパキこなさなければいけない、とか、イージーミスをしてはいけない、とか、プログラミングでのバグは一切許されない、とか、斬新なアイデアを盛り込まなければいけない、とか、会社の期待に応えなければ……といったような精神的な緊張やストレスが付け加わると、心や脳はいっそう緊張し、自分の意思とは無関係に、息を詰めるとか止めるという、ある意味信じられないような現象すら、引き起こしかねないのです。
そして、人は緊張すると、奥歯を無意識に噛みしめたりしますから、それが耳の周辺にも影響を及ぼし、関連する首や肩の筋肉、さらにその先の腕、肘などにも強い影響を及ぼし、傍から一見してそれとわかるような、強張った印象を生み出したりもするわけです。
また、頭がボ~とするというのも、脳は最も酸素消費量が多い臓器で、酸素が十分に回ってこなければそれだけで脳の働きが重篤な影響を受けかねません。よくいわれる糖分とともに、脳は新鮮な酸素を絶えず必要としているのです。その新鮮な酸素を取り入れ、人体に巡らせる肺の機能を、自身の姿勢の悪さから阻害しているとなると、やはり頭への影響は避けられないでしょう。
加えて、心の緊張が顔に現われると、鼻呼吸に影響することも考えられます。
鼻呼吸は、吸い込んだ空気に含まれる埃やウィルス等の侵入を鼻毛で防ぐほか、鼻の穴のなかの湿度や温度を一定に保ち、粘膜を守り、乾燥を防いでくれます。とともに、鼻の奥は脳の底部と接しており、脳の過熱を防ぐ役割もしています。また、口呼吸に比べ、鼻呼吸のほうが体全体への酸素吸収効率も高いといわれています。
そうした点をあれやこれや考えると、脳がボ~としたり、体が疲れやすくなる、というのも、十分にあり得ることではないでしょうか。
呼吸は心身の健康、平安の要
改めて言うまでもなく、呼吸は、人が生を営むための大元に位置し、心身の健康、平安の要ともなるものです。
最近読んだ、ヨーガの本、『アシュタンガ・ヨーガ 実践と探求』(グレゴール・メーレ著、ガイアブックス刊)によれば、呼吸について、次のような記述が見えます(一部要約)。
・ヨーガでは、呼吸をする際に腹部も胸部も両方を使う。活発に呼吸をすることによって、肋間筋が動く。空気が文字どおり肺から送り出され、肺には呼吸の量、つまり完全に息を吐いた後で残った空気量だけが残る。目的は、活力を増大させるためにより深く呼吸をすることである
・呼吸量を増やしたい理由は、大きく2つある。1つは、吸い込む量を増やすことで酸素の供給量を増やすこと。もう1つは、吐き出す量を増やすことで、毒素を多く吐き出すことである
・この毒素には、精神的毒素(たとえば別の人間に対する葛藤の思考など)、感情的毒素(不安、怒り、嫌悪、ねたみ、苦痛への傾倒など)、身体的毒素(排出されていない代謝老廃物)、環境的毒素(鉛、ニコチン、二酸化炭素など)がある
・これらの毒素はすべて、関節や脂肪組織の周りなど酸素があまりなく、体の中でも「新鮮でなく」「活気のない」部分にたまりやすい。これらの毒素が蓄積すれば、体のある部分は活気という点で死んだ状態になり、やがては慢性疾患が生じる可能性もある
・深く呼吸をして蓄積された毒素を吐き出し酸素を吸い込むことで、体を元の健康な状態へと戻す第一歩が踏み出される
また、『ヨーガ・セラピー』(スワミ・クヴァラヤーナンダ他著、春秋社刊)に目を通すと、次のような指摘がなされています(抜粋要約)。
・心身のいかなる障害も、また、いかなる感情も、苦悩や憂鬱をもたらし、筋肉や血管の収縮リズムを乱す
・筋肉や血管の収縮リズムの乱れは、病気にいたる心身の連鎖的な反応を開始する引き金になる
・呼吸のリズムの乱れも、この筋肉や血管リズムの乱れが原因となっている
・筋肉の緊張が突然高まると、循環系、呼吸系、糖代謝などの代謝系の負担が大きくなる
・そのうえ、感情的な状態で全身の血管が収縮すると、狭まった血管の抵抗に逆らって機能しなければならない心臓や肺にいちだんと重い負担がかかる
・自律神経系も内分泌系も異常な状態におかれる
・さらに、それは骨格筋だけでなく全身へと影響をおよぼす。内臓の働きは大きく阻害される
・感染症にかかりやすくなり、また各種の慢性的な機能代謝障害が引き起こされる
……以上、2冊の本を参考にご紹介しましたが、要するに、心や呼吸、姿勢といった問題は、そのまま放置して適切な対応策を講じなければ、ありとあらゆる身心の不調、トラブルの大きな原因となり得る、ということです。
念のため、ご相談者のチャクラ(体の中心軸に7か所ある微細なエネルギーセンターで内分泌腺と関係)の働きについても、水晶のペンデュラムを使って調べたのですが、7つあるそのどれもが不活発な状態で、そのこともやはり、姿勢の不良や呼吸の不十分さから来るもののように判断されました。
では、どうするか……。
深い呼吸のできる体に…
要は、先に紹介したグレゴール・メーレ氏が言うように、深い呼吸ができるようにして、体を元の健康な状態へと戻すことが肝心、と思われました。
これまでの整体施療体験では、もっとひどい状態の人も結構みてきましたが、それらのケースに比べ、幸い、今回のご相談者はまだ若く、疲れているといっても、体の土台もしっかりしているように見受けられましたから、まずは、この点をちゃんとすることだと思いました。
で、何をしたか、ですが、実は、外見的には、あまり大層なことをしたわけではありません。
要点のみを記載すると、
4つの対応策
1)胸が開くようにする
ご相談者に、少し上を向いて、胸を開くようにしてください、と言うと、苦しくてできません、とのこと。試しに、胸の肋骨周辺をほんの軽く指先で押すと、痛い! という反応です。それだけ胸部が圧縮されているという証左で、圧痛を感じるのも無理のないことでしょう。そこで、胸周辺から脇、首、肩周りのご本人が辛いと感じる箇所を、軽く指先で丁寧にトントンし、詰まりを取り除くようにしました。
「よくなれトントン」については、下記に書きましたので、ご覧いただければと思います。
2)ボルスターを背にあて仰向けに寝てもらう
すると、胸がある程度開くようになってきたので、次は、ボルスター(円筒状の休息用クッション)を尾骨から後頭骨まで脊柱に沿って当て、仰向けに胸が自然に開くようにして寝てもらいました。幸い、とても気持ちが良いとのことでしたので、しばらくそのままの姿勢で10分ほど休んでもらいました。
3)逆腹式呼吸練習
次に、簡単な逆腹式呼吸の練習をしてもらいました。これは、実は筆者が関係するニコニコ太一気功サークルでもやっていることなのですが、椅子に坐ってもらい、まずは前傾して息を吐いた状態から、両手を下腹部に当て、息を吸いながら、軽く下腹部に圧をかけながら、起き上がってもらいます。
このようにすると、息を吸うときに横隔膜を引き下げ、骨盤底筋を引き上げ、内臓の働きを活性化するとともに、胸郭も広がり、息をしっかり吸い込めるようになります。また、息を吐くときには、前傾姿勢時に自然に腹部が緩み、緊張から弛緩へと私たちの身心を誘ってくれます。つまり、吸う、吐くという呼吸運動がリズミカルに比較的簡単に身につくというわけです。
ご相談者は、趣味でミニサッカーをたまにやられているそうで、幸い、この動作にもうまく順応してもらうことができました。
そして、しばらくこの動作を続けてもらっていると、頭が少しスッキリしてきたような気がする、体も熱くなってきた、という嬉しい反応が得られました。
これは、それだけ、酸素が体内や脳に回るようになってきた! という現われといえるでしょう。
4)左肺経絡の活性化と耳の周辺ほぐし
この段階で再度、チャクラをチェックしてみると、5番と6番を除き、ほぼ正常な反応に戻りました。5番というのは喉のチャクラで、6番は眉間にあるチャクラです。
そこでさらに気(生命エネルギー)の流れをみてみると、左鎖骨部にある中府、雲門という肺経絡のツボから左手首母指側の太淵というツボにかけて、まだ気の流れに問題がありそうなことがわかりました。
先に、ご本人は仕事で、左肘を机につき、屈みこんだような姿勢で、長時間働いていたということですから、それだけこの部分については、やはり緊張度が強かったということなのでしょう。
この部分を丁寧にほぐし、気の流れが疎通するように促していったところ、やがてこの部分も正常化することができました。
しかし、この部分以上に圧痛がひどかったのが、耳の周辺部でした。耳の入り口の耳甲介腔にある心点(ノジェ博士の耳診法で機能障害の反応点として知られる)や後頭骨乳様突起(顔の側面、耳の近く)辺りに指を触れると、大変痛がります。これは、経験上、心理的に緊張度が強い場合に多く見受けられる反応です。
そこで、この箇所を丁寧に、念入りにやさしくほぐしていったところ、途中からご本人は大きなイビキをかいて眠りはじめました。緊張していた気持ちが、ようやくにして深いところからほぐれてきたのかもしれません。
やがて目覚めたご本人から、あ~、スッキリした、体が楽に、軽くなった、周りが明るくなったような気がする、という声を聞くことができました。見ると、確かに顔の色艶もよくなり、元気になられたようで、目もパッチリしてきた印象です。5番、6番のチャクラも正常に復することができました。
こうして今回、心身をめぐるトラブルは、呼吸を中心にした調整により、ひとまず解消に向かったのでした。(⌒-⌒)ニコニコ
なお、呼吸については、この「健康太一ミニコラム」でも、下記の35、36 、37 の記事で取りあげていますので、よろしければ是非こちらもご覧ください。
38 O脚が5分で治った!?
36 「呼吸」について(続)
35 「呼吸」について
27 夏の暑さに負けない気功法
25 一生楽しめる健康法!
23 三骨軽打法について
21 百病を癒す甩手!
20 練功から煉功へ!
17 結構すごい、ツボの効果!
15 “湿邪”から身を守ろう!
13 猫背を癒す簡単な方法
10 気功的平衡ということ
06 体幹と末梢運動について
05 姿勢美人と中心力
03 静止して動く!
02 “脱力”のちょいヒント