健康太一ミニコラム:免疫力をアップする運動のやり方
いま、コロナウイルスの蔓延で急速に関心が高まっている「免疫力」。免疫力を高めるとは、一体どういうことなのか? それにふさわしい運動のやり方とは? ……
45 免疫力をアップする運動のやり方
ホメオスタシス
いまから十数年前、筆者が気功整体学校に入って授業を受けた際、最初の頃に習った言葉が、「ホメオスタシス」でした。
馴染みのないカタカナがいきなり飛び出してきていささか面食らったのですが、ホメオスタシスとは、要するに、生物が、生体内部や外部の環境変化にもかかわらず、生体を一定に保とうとする性質があることを言い表わす言葉で、日本語では、「恒常性」と訳されています。
それで、この学科授業で教えられたのが、体の神経系、内分泌系、免疫系が、体の諸機能とも互いに密接な関係を保ちながら働くことにより、人はようやく無事に生きているのだということ、それらの働きのどの要素を欠いても、人は健康のうちに生を全うできない、ということでした。
確かに、落ち着いて考えてみれば、人間は、たった一つの受精卵が分化を重ねて人体へと成長したものです。部分、部分を寄せ集め、繋ぎ合わせて、出来たものではありません。
部分に拘泥するのではなく、体全体を一つとみて、全身を協調させて生存、生きながらえるというのは、その意味では至極当然のことかもしれません。
個体が生きる、というのは、一部だけを切り離してその部分だけで生命活動を営むというものではないでしょう。環境も含めて、全身のいろいろな要素が関連し合い、協調し、協働することで、私たちの生命反応は正常に維持されているのだと思います。
全身の緊密なネットワークの中で保たれる命
そんな関係性、つながりについて、その後、学習したことも含め、といっても、かなり基本的なことばかりなのですが、順不同に、思いつくまま、いくつか例をあげてみますと……
●免疫
まず、今回のテーマである免疫についてですが、岩波の国語辞典第三版では、「体内に病原菌や毒素その他の異物が侵入しても、それに抵抗して打ちかつ能力。また、異物と反応する抗体を作って発病をおさえる抵抗力を持つこと」とあります。
この免疫があるお陰で、私たちは細菌やウイルス、ほこり、汚染物質など、体に有害なものから身が守られているというわけです。まさに免疫力様さまですが、もしこの免疫力が下がれば、当然、感染症などにもかかりやすくなります。たとえそこまでいかなくても、傷が治りにくいとか、肌荒れ、あるいは下痢症状とか、花粉症・アトピーなどのアレルギー症状が出やすくなったりします。
●体温
では、その免疫力が正常に働くのはどんなときかというと、個人差はあるにせよ、成人の体温である36~37℃とされ、これよりある程度の幅で体温が上がると免疫力は高まり、下がると低下すると一般的にいわれます。デスクワークが中心であまり体を動かすことの少ない現代人は、比較的低体温傾向といわれており、やはり適度な運動を定期的に行ない、体温を上げていくことが大切になります。
感染症予防のために自宅に閉じこもることが多くなれば、このことは一層、注意を払うべきこととなるでしょう。
ちなみに、このところよく話題に上るWHO(世界保健機関)では、成人の場合は1日30分、子供の場合は1日1時間の身体活動を推奨しています。
もっとも、WHOの運動不足に対する警鐘は、今に始まったことではありません。数年前の2018年の報告書でも、身体活動の不足は、がんや心血管疾患、糖尿病などの主要な危険因子になるとして、目安として、5~17歳では、中程度から激しい強度の身体活動を毎日少なくとも1時間、さらに週に少なくとも3回、筋肉と骨を強化する活動を含めることを推奨し、また、64歳までの成人には、週に2時間半の中程度の運動と2日以上の筋力強化を勧告する、といった内容の報道がなされています。
●筋肉
こうして運動が推奨される理由の一つとしては、筋肉が最大の熱産生器官であるためといえるでしょう(通常の活動時、腹腔内臓器の35%に対し筋肉は60%とされる)。
とはいえ、体温が高ければ高いほどいいというわけではもちろんありません。温度があまりに上がり過ぎると、今度は人の細胞や組織が正常に働くことがむずかしくなるので、汗をかく(熱放射)ことで、37°近辺の平熱を保とうとします。これは、ご承知のとおりです。そして、これも、先に述べたホメオスタシスの働きというわけです。
●血流
また、骨格筋を積極的に使って運動することは、体温を上げるばかりか、血流の促進にも関係します。そして、このことは、個体の生命力、自然治癒力を高め、免疫力をアップすることにもつながっていきます。
というのも、血液は、各器官、細胞に、酸素と栄養を運ぶという大切な役割をもっています。もし血流が悪くて、血液が十分に細胞に行き届かないということになると、神経の中枢である脳細胞にも大きなダメージを与えますし、ホルモン(化学的情報伝達物質)の働きにも悪影響を及ぼします。ホルモンは、血中に分泌(内分泌)されることで、体内環境の調整に、大きな影響を及ぼすからです。
●内分泌器官
では、そのホルモンはどこで作られるのかというと、内分泌器官(内分泌腺)というところで作られ、分泌されます。具体的には、頭部にある脳下垂体や松果体、視床下部、頸部にある甲状腺、胸部の胸腺、腹部・腰部の膵臓や副腎、腎臓、骨盤腔にある精巣、卵巣などなど、内分泌器官は、全身の様々な部位にわたっています。
●ホルモン
こうして体のそれぞれの部位で作られたホルモンは、たとえば、代謝の促進や血糖・血圧の上昇に関与したり(脳下垂体前葉)、全身の細胞の働きを活性化したり(甲状腺)、血液中のカルシウムを調整したり(副甲状腺)、ストレス反応を調整したり(副腎)、血圧を調整したり(腎臓)、赤血球を作るよう刺激したり(骨髄)、血液中の糖分調整をしたり(膵臓)と、正に生命維持にとってなくてはならない大切な機能を果たしています。
ホルモンがどういうメカニズムで体内のミクロの生命現象に関わっているのか等の詳細は、この際、専門書に譲ることとして、私たち一般人が体を動かすうえで知っておかなければならないと思うのは、免疫がきちんと働くには、これらの機能が適時、適切に行なわれる必要があるということです。
そして、大切なことはむしろ、そうした重要な働きをしている体の各部位が固まったり縮んだりしてその働きが鈍ったり、機能不全・低下に陥ったりすることのないよう、(該当部位の筋膜が)しなやかに、伸びやかに動けるようにすることではないかと個人的には思うのですが、どうでしょうか。
後に述べることになる運動に際しては、このことをよく留意して行なう必要があると思うのです。
ちなみに、( )書きした、筋膜を動かすことの大切さについては、過去の記事のなかで、既に取り上げています。ご関心のある方は、以下をご覧ください。
●自律神経
さて、免疫系、内分泌系(ホルモン)と、たいへん大雑把ながらも話をしてきましたが、これらと密接に関わり、互いに情報をやりとりしながら、私たちの呼吸や消化、排泄、体温、血圧など、生命活動の根幹がスムーズに運ぶよう、休みなく働いているのが、自律神経です。
この自律神経には、交感神経と副交感神経があります。
よく知られているように、交感神経は主に日中に活発に活動しているときに優位になり、たとえば血圧や血糖を上げたり、心拍数の増加、発汗促進などの働きがあります。これに対し、主に夜間、リラックスしているときに優位に働くのが、副交感神経です。今あげた例でいえば、血圧を下げたり、心拍数の減少、発汗抑制など、反対方向の作用を及ぼすことになります。
これは、いわば、車のアクセルとブレーキのようなものです。この双方の神経がうまくバランスを保つことで、体のホメオスタシス(恒常性)も維持されるというわけです。
そして、この拮抗・相反する交感神経と副交感神経のバランスを支配しているのが、間脳の視床下部と呼ばれる部分です。
視床下部は、下垂体とも連携し、微妙なホルモンバランスをコントロールしているとされますから、もしもこの自律神経のバランスが崩れると、ホルモン分泌にも影響を与え、結果として組織や臓器によくない影響を及ぼすことになります。
もっとも、この神経系と内分泌系の関係は、一方向性のものではなく、双方向に働きます。そのため、逆に、ホルモンバランスが乱れると、自律神経の働きに悪影響を及ぼす恐れもあるわけです。
こうしたホルモンバランスの乱れから、自律神経失調症になるケースもある、といわれます。
また、自律神経は、白血球による生体防御や免疫システムにも大きく関係しています。
いまの世の中は、仕事にしろ、家庭や社会での人間関係にしろ、精神的にも肉体的にも、かなりストレスフルです。こうしたストレスがあると、交感神経が過剰に刺激され、その緊張が続くと、免疫系の働きに影響を与え、様々な病気や体の不調を招きかねないことになります。
事実、気功整体という仕事をしている我が身にとっても、来院者の心身の緊張が、たとえば腰痛や耳鳴り、あるいは東洋医学でいうところの肝経異常、腎経異常、脾胃の乱れ、また、さらには内分泌系と関係するチャクラの異常など、全身にわたる様々なトラブルとなって現われているのを、日常の施療現場でも、しばしば体験しているところです。
●呼吸
しかしながら、自律神経系、内分泌系、免疫系が互いに影響しあうということは、逆の流れも当然にあり得ることになります。
どういうことかというと、自律神経系に上手に働きかけることで、心身の機能を回復させるようにもっていくことも十分に考えられるわけです。
たとえば、呼吸です。
通常、自律神経は自分の意志で調節することはできません。それゆえにこそ“自律”神経と呼ばれるわけですが、ただ、これには唯一例外があるとされます。「呼吸」です。呼吸は、自身の意識でもって、自律神経に介入できるということです。
気持ちが高ぶって興奮しているときとか、落ち着かないときに、フ~と深く溜息をつくように息を吐くと、気分が楽になるということがあります。これは、交感神経優位になっていた自律神経が、意識的に息を吐くことで、副交感神経優位へと移っていくためです。
ニコニコ太一気功のサークル活動では、運動時に、細く長く息を吐くことを推奨してやるようにしていますが、これも現代人に深く根付いている心身の緊張を解きほぐす意味もあってのことです。
なお、呼吸については、下記の心の平安ということとも関係した重要なテーマであり、過去の「健康太一ミニコラム」でも様々な角度から取り上げていますので、そちらのほうにも是非お目通しいただければ幸いです。
⇒ 「呼吸」について
●心の平安
サークルでは、呼吸と同様、運動そのものについても、けっして頑張り過ぎず、無理をせず、気持ちの良さを推奨しています。これも、心の平安を重視するがゆえで、それでなくてもストレス過多、交感神経優位に偏りがちな心身を、運動をすることでさらに加速させることがないよう、適度にリラックスしていくことを意識しているわけです。
また、「脱力」をかなり強調して運動をするようにしているのも、緊張ばかりしていては、緩むべき心身も緩まない恐れがあるからです。
適度に、気持ちよく運動することで、初めて、運動がもつプラスの効果が期待できるのだと思います。
先に、「血流」について述べましたが、怒ったり悲しんだりすると、血液は粘っこくなり、流れにくくなるといわれます。そのことは当然に、免疫系の働きにもよくない影響をもたらしかねません。繰り返しますが、心を平安に保つことが、自律神経をバランスよく保つ秘訣ではないかと思っています。
免疫力を高めるためにどう運動するか?
以上、『ニコニコ太一通信 2020年4月号』でテーマに掲げた「自然治癒力を高め、免疫力をアップする」ことの意義と意味合いについて、かなり断片的ではありますが、お話してきました。
再確認の意味も含めて、こうして、いささか長々とお話してきたのは、そのことがわかると、運動をどうするかということについて、方向性や着眼点も明らかに見えてくるように思ったからです。
そこで、前段の話を受けて、今度は具体的にどう運動していったらいいのかについて、以下に要点を述べてみたいと思います。
●全身を使う運動、全身を協調して働かせる運動を
前述のように、免疫力といっても、現実には、免疫力のみで生命力がアップするというものではありません。神経系、内分泌系との緊密な連携のうえに、生命の営みが成り立っている以上、運動をするにしても、それは体の全機能を対象にしたものがふさわしいということになります。
どこか一部分だけをせっせとやるというよりは、全身にわたって各部位に有効に働きかける運動ができるだけ望ましいということです。
個人で運動する際は、そういう視点から、これまでサークルでやってきたことを思い出しながら、運動していっていただければと思います。
〔運動例〕
①「やわらか気功」でしている全身の関節ほぐし・体ほぐし(どこの関節が拘縮しても、それは全身に波及して、体の柔軟性に影響を与えます。丁寧に一つひとつほぐしていきましょう)
②峨眉伸展功(頸・うなじからはじまって、肩、肘、腕、指、腰、脇肋、脊柱、膝、大腿、足趾、足底、臀部、脚、胸部、腹部と、それこそ全身にわたって伸展させていく、お薦めの功法です)
③全身活性運動(坐って、音楽に合わせて、リズムよく全身の経絡に働きかけ、気という生命エネルギーを体中に回す、お手軽でいてなおかつ効果の期待できる運動です)
④香功初級・中級(これも、やさしい動きで、全身に働きかけるお薦めの功法です)
⑤ヨーガ太陽礼拝(これもお薦めの運動です。体全身の屈曲・伸展を通じ、呼吸が自然に深くなっていきます。背骨が十分に動かされて自律神経が整うほか、5分ほどの短時間の運動でも、発汗作用が強く働き、体温が上昇するのを実感できると思います。全身をしなやかに動かすことで、代謝もアップし、脂肪の燃焼効果が高まることも期待できます。慣れてくると、頭がクリヤーになってくるのもわかるかと思います)
⑥健身気功八段錦通し(八つの動作から成り、胸郭から腹部、五臓六腑、脊柱、脾胃、頸部、肩関節、背部、中枢神経系、臀部、股関節、腰腎、全身の筋肉、気血の巡り……と、全式を通してやることで、体中が整っていくことが期待できる、やはりお薦めの功法です)
⑦健身気功六字訣通し(先に呼吸の大切さについて触れましたが、この功法は、その呼吸吐納に重点を置いて、独特の呼気発声により、臓腑を丈夫にするばかりか、筋骨も鍛えていくという、これも大変に優れものの功法です。サークルでは主に季節の養生功としてやっていますが、全六式ほかを通してやることで、気候や季節変動などの環境変動にも柔軟に対応できる心身づくりに役立ちます)
⑧十三式気功太極拳(全身に気を巡らすばかりか、呼吸法としても、また自然と調和し心身を安らぎに導く方法としても、大変に優れた功法だと思います)
以上、あれこれ沢山あげましたが、もちろん、これらを全部ということではなく、気に入っているもの、あるいは覚えているものがあれば、どれでもいいですから、やっていってくださればと思います。
もっとも、サークル歴の浅い人の場合は、習ったことがないものばかりかもしれません。そんなときは、以下に述べるような運動も参考にして、やってみてください。
留意点は、繰り返しますが、あんまり頑張り過ぎないこと。気持ちの良さを重視して、体中をほぐし、気の巡りを良くしていってください。そして、コツコツと毎日、少しずつでも体を動かしていってください。
●自然治癒力・免疫力をアップするピンポイント運動
さて、ひとまとめに「全身運動を!」といっても、いま言うようにサークル歴の浅い人とか、人によっては、個別の事情もあって、なかなかそうもいかない点があるかもしれません。たとえば、時間の問題であるとか、動作をよく覚えていないとか、あるいは体調面でどこか気になることがあるとか、心が不安定で落ち着かないとか、いろいろおありかもしれません。
そこで、別の角度から、もう少しピンポイントに焦点を当てて、以下に要点を整理し、ご紹介してみたいと思います。
このことはまた、上記の全身運動をする際の、要所、要所で留意すべき点の確認にもつながることにもなると思います。
(1) 副腎と腎のある部位に着目して、体を動かそう!
ご承知のように、腎臓は体の背中側の腰のところに、背骨を挟んで左右に1個ずつあります。大きさはこぶし大ほどです。
腎臓というと、血液中の老廃物や塩分を濾過し、尿として体外に排出する泌尿器としての重要な役割がすぐ頭に浮かびます。ですが、それだけでなく、ホルモンも作っており、血圧の調整とか、骨髄に作用して赤血球産生を促進するとか、骨を丈夫にするビタミン(活性ビタミンD)作りにも関係しています。
一方、この腎臓の上にちょこんと乗っかるようにしてあるウズラの卵ほどの小さな臓器が副腎です。“副”とあるので、なにやら腎臓の補助機関みたいなイメージを持たれるかもしれませんが、実は、腎臓の働きとは別に、内分泌器官として、大変大切な役割を担っています。
その特に大切な役割とは、ストレスに対抗するホルモンを分泌することです。この点について、簡単にまとめてみましょう。
「自律神経」のところでも少し述べたように、現代人は多くの精神的ストレスを抱えて生きているといえるでしょう。こうした大小さまざまなストレスに遭遇すると、人は脳が指令を出していろいろなホルモンを分泌し、緊張や不安、恐れなどに対処しようします。そのとき、脳内から分泌されるホルモンとは別に、腰部にある副腎からもホルモンを出して、このストレスに対応しようとします。
しかし、あまりにストレスが過多になると、副腎が疲弊して、うまく対応できないようになります。そうすると脳がその影響を受けて、結果として、疲れやすいとか、やる気が出ないとか、アレルギーがひどくなるとか、感染症にかかりやすくなる、といった症状が出やすくなります。
つまり、逆にいうと、この副腎をしっかりさせておくことが、心を平安に保つためにも、また、感染症対策のためにも、とても重要になるというわけです。
このように副腎と腎のある腰部は、人が生命活動を営むうえでとても重要な役割を担っていますが、興味深いことに、東洋医学のほうでも、この部位を大変重要視しています。
東洋医学では、この部位を、父母から受け継いだ先天の精(生命エネルギー)として、生命を維持し、五臓六腑を滋養する根本物質とみなしているのです。
したがって、運動するにあたっては、以上のことを念頭に置いて、この部位をよく伸展させるなどして、拘縮を取り除くようにする必要があると思います。
そのための〔運動例〕としては、
①健身気功八段錦の「両手攀足固腎腰」(両手で足をつかみ、腎と腰を強化する、という動作です)
②健身気功六字訣の「吹字訣」(チュイーという唇音を発声吐気しながら両掌を腰から下へ擦りおろす動作です)
③ヨーガ太陽礼拝の「立位背屈と前屈」のパーツ練習(これによって、腰部をよく伸展させ、ほぐしていきます)
④峨眉伸展功「揺頭擺尾式」「旋腰式」(腰を強くし、腎を補います)
⑤足裏マッサージ(足裏には反射区といって全身の器官や内臓が反映されているとされます。そこで、腎臓、副腎に該当する場所を中心に足裏をよくマッサージします。該当場所がわからないという方は、足裏全体を手でマッサージしてください。青竹踏みもOKです。また、足裏には湧泉という東洋医学の腎経のツボがあります。ここに刺激を加えるのも効果的です)
(2) 免疫の司令塔胸腺と胸部を活性化しよう!
先に、岩波の国語辞典を引いて、免疫とは何かについて、お話しました。その免疫に大変大切な役割を果たしているのが、胸部、胸郭の後ろに位置する胸腺です。
では、胸腺は何をしているのかというと、簡単にいえば、骨髄で産生されたリンパ球(免疫細胞)を、成熟、増殖させ、免疫力を強化する役割を担っています。
リンパ球の偉いところは、まず、体内に細菌やウイルスなどの異物が侵入した際に、それをすばやく感知して抗体をつくり防御します。そしてそれにとどまらず、その異物のデータを記憶し、体内で新しく生まれたリンパ球にも引き続ぐことで、将来、同じ異物が侵入してきても抑えこむことができるようにします。その司令塔的な役割を、胸腺が果たしているのです。
しかし、この胸腺は、一般的に加齢とともに萎縮し、機能が低下してしまうとされています。中高年齢者にはなかなかに厳しい宣告といわなければなりませんが、ただ、あることをすれば、その働きを維持することはできるといいます。
何をするかというと、一つには、不満や取越し苦労、憎しみ、悲しみなどの精神的ストレスを避け、溜めないようにすること。とともに、胸腺に血液やリンパ液をより多く送り、胸腺の機能を復活させること。胸腺周辺を“もみほぐす”ことで、その働きはぐんぐんよくなる(『最後は「免疫力」があなたを救う!』(堀泰典・安保徹著 扶桑社刊)――ということです。
えっ、そんなことで!? と、驚かれ、眉に唾する向きもいらっしゃるかもしれませんが、筆者の気功整体での施療体験でも、体にちょっとした、それに類するような刺激を加えることで、来院者の不調が改善に向かうということは結構、あります。
ご参考までに、『WIRED』(人の未来像について幅広く発信する情報メディア)の最近の記事(2019年9月22日)では、学術誌『Aging Cell』に掲載された論文をもとに、51歳から65歳までの男性9人を対象に、成長ホルモン等3種のサプリメントを1年間投与して胸腺再生による免疫修復を試みたところ、実際に、胸腺の機能再生と回復、若返り効果が見られた、といっています。
胸腺の可能性は、やりようによって、まだまだ未来に向けて開けている、といっていいのかもしれません。
ちなみに、この部位はアナハタチャクラといって、ヨーガでも大変重要視されている箇所です。そのテーマは、感情、慈愛であり、ここが不活性だと、心身ともに不安定になりやすいといわれています。
また、この胸部には、東洋医学でいうところの「膻中」というツボがあります。そして、このツボは、大変興味深いことに、「呼吸、あるいは精神機能等の病によし」されています。(『誰にもわかる経絡治療講話』本間祥白著 医道の日本社)
よく精神状態を言い表わす言葉として、「胸ふさがる」とか「胸が張り裂ける」、「胸がつかえる」といった表現があります。確かに人は、辛いとき、悲しいとき、苦しいとき、胸を閉じて、背中を丸め、縮こまったような姿勢になります。
こんなときは、肺も押さえ込まれて、呼吸も滞りがちとなります。新鮮な空気、酸素が入らないと、体も活性化されません。頸部も固まりがちで、脳への血流も細りがちとなるでしょう。意気も消沈しがちです。これでは、免疫力にも悪影響を及ぼすことは必定です。
そうならないよう、この部分を積極的に開放し、伸びやかにしていきましょう。
〔運動例〕
①健身気功八段錦の「五労七傷往後瞧」(両腕を外旋し、目は左、右と交互に斜め後方を見て、両肩を後ろに張る、という動作です。ちなみに、五労とは五臓の疲労、損傷を指し、七傷とは七つの感情面での傷害を指します)
②同じく健身気功八段錦の「両手托天理三焦」(こちらは、両掌を胸前から上にあげ、掌心を上に向け、顔を上げて手の甲を見る、という動作です)
③もう一つ身気功八段錦から「左右開弓似射雕」(両足を開き、腰を落として、左に、右にと弓を引く動作です。これによって、肩を伸ばし、胸を広げ、両肺の機能を高めます)
④健身気功六字訣の「呬字訣」(両掌を向かい合わせて両肘で脇を締めるようにし、両肩甲骨を脊柱に寄せ、肩を伸ばし、胸を広げ、首を少し後ろに縮め、目で斜め上方を見る姿勢から、スーという歯音を発声吐気しながら両掌をゆっくりと前に押し出す動作です。これによって、肺の呼吸機能を活発にします)
⑤峨眉伸展功の「頸項式」「肩肘式」「腕指式」(少し範囲を広げて頸、肩、肘、腕、指先と緩めていきましょう)
⑥ヨーガ「三日月のポーズ」(ちょうど月が三日月、あるいは眉月になるように、両肩を後ろに回し、両手を頭から上に伸ばし上げ、胸を気持ちよく開いていく動作です。また、両手をあげて左右に側屈する場合は、側腹を伸ばし、血行をよくし、呼吸を深めます。サークルでは、太陽礼拝に続き、いずれ「月のヨーガ」として皆さんと一緒に学んでいきたいと思っています)
(3) 骨盤のゆがみを解消し、自然治癒力、免疫力をアップしよう!
ご承知のように、私たちの体の中心を形づくる背骨は、三十幾つもの脊椎が積み重なってできています。人の骨格を支える支柱――という重要な役割を果たしていますが、それだけではありません。
脳と脊髄から成る中枢神経、体の各部位とつながる末梢神経(自律神経と運動神経から成る)の重要な伝達路になっているのです。
頭の働きも、内臓の働きも、筋肉の働きも、骨の働きも、全てはこの神経伝達がスムーズに行なわれて、はじめてその機能を円滑に発揮できることになります。
そして、骨盤は、その背骨の土台部分にあたります。上半身と下半身をつなぐ(股関節で脚部と連結)要所であり、また、内臓を支える受け皿ともなっています。
もし、骨盤がゆがむ(骨盤の前後傾、回旋、腸骨の左右の高低差など)とか、関係する関節部や靭帯部等に詰まりがあるとかすれば、途端に、様々な問題が噴出するということにもなりかねません。脳との情報伝達に影響が及び、ひいては、これまで述べてきた内分泌系、免疫系にも芳しくない影響を与えかねません。土台がゆらぐことで、悪くすると、体全体がガタガタになる恐れすらあるわけです。
たとえば、骨盤のゆがみから起こる症状としていわれるのは、
・反り腰 ・猫背 ・側彎症 ・O脚やX脚 ・腰痛 ・肩こり ・膝痛 ・内臓下垂 ・代謝不良 ・リンパの流れの阻害 ・肥満 ・血行不良 ・手足の冷え ・便秘 ・むくみ ・生理痛 ・顔のゆがみ ……
などなどです。
繰り返しになりますが、こうした辛い症状をおこさないためにも、股関節、下半身も含め、骨盤に関わる部位をよく整え、それによって、自然治癒力の向上、免疫力のアップにつなげていく必要があります。
〔運動例〕
①やわらか・フロア気功の「脚の脱力運動(内回しと外回し)」「脚(と上肢)の伸展(遠くへ遠くへ)」「骨盤ほぐし(ローリングとピッチング)」「骨盤回し(坐骨を支点として時計・反時計回し)」「股関節の外旋と内旋」「脚の持ち上げ倒し」
②峨眉伸展功の「腰跨式」「旋膝式」「展腿式」「仆腿式」(両母指を腰のツボに当て腰跨を回す、膝を内転外転・左転右転・屈伸する、大腿を伸展する、腰を落とし股関節を開き脚を伸展する、という動作です)
③ヨーガの「英雄のポーズ」「三角のポーズ」(骨盤のズレの調整や、股関節の柔軟性、下半身の安定性を高めるのに役立ちます。「月のヨーガ」同様、いずれ皆さんと一緒に学んでいきたいと思っています)
(4) 簡単な運動で、心と体を整えよう!
ここでは、比較的簡単にできて、心と体を整えるのに役立ち運動をご紹介します。
〔運動例〕
①「甩手(スワイショウ)」
これまで「やわらか気功」のなかでずっとやってきた甩手は、ただ手を振るだけの簡単至極な運動であるにもかかわらず、本場中国でも効果が実証されています。また、リズム運動の一種ですから、ある程度時間をとって行なうと、心身の健康維持に役立つセロトニンという脳内物質の分泌を高めるのにもいいといわれています。要点は、過去のブログ記事でもとりあげていますので、以下をご覧いただければと思います。
⇒ 百病を癒す甩手!
②「お顔のリフレッシュ気功」
これは、10分足らずの軽快な音楽に乗り、手を主に顔、頭の周りで動かしてする気功法の一種です。「元気気功」のなかで、活動のエンディングとして、みんなで、椅子に坐って輪になり、楽しくやっているものです。
目的は、顔を含めた頭部の緊張をほぐし、心を平安にし、前向きにリフレッシュするためです。
では、なぜ顔、頭部なのかということになりますが、それは、この部位が心や感情とも密接な関わりをもつものだからです。
たとえば、表情筋です。顔の目や口、鼻などを動かす表情筋は30種類以上もあるといわれ、複雑な感情表現を行なっています。
でも、それが精神的な緊張、ストレスなどで、顔がこり固まるとか、みすぼらしく不活発で、他人とのコミュニケーションにマイナスになるものであったらどうでしょうか……。そんなことにならないよう、顔に十分な生命エネルギーを送りこみ、明るく、前向きなものにリフレッシュしていきたいわけです。
また、顔まわりには、耳下腺、顎下腺、鎖骨のくぼみにある静脈角などのリンパ節があります。
リンパは、体の不要物、老廃物を排出する大切な浄化システムですから、免疫力を高めるうえでも、この部位をしっかり機能するようにしておく必要があります。
それから頭部には、人の体全体を調整、コントロールする脳を保護する頭蓋骨があります。
なかには頭の骨はたった一つでできているのではないかと思っている人もいるようですが、実は、この頭蓋骨は、15種類23個の骨が、縫合という仕組みで、複雑に組み合わさってできています。
そして、近年の研究調査の結果、その骨が微妙に動き、体にさまざまな影響を及ぼしていること、さらには、詳細は省きますが、その縫合に関係する微かな異常を調整することで、たとえば自律神経失調や躁うつ病の改善・解決、あるいは頭痛やめまい、呼吸困難の是正、倦怠感の解消などなど、実にいろいろな方面で役立つということもわかってきたのです。
ついでながら、東洋医学のほうでも、これまた詳細は省きますが、顔や頭部は陽の経絡が集まるところであり、この経絡をうまく調整することで、恐れや悲しみ、心配などからくる体の不調にある程度対処していくことも可能となります。
ちなみに、筆者の施療体験でも、顔、頭部のほぐし・調整により、施療を受けられた方の顔色が明らかによくなるとか、色艶が増すとか、小顔になるとか、顔のゆがみが取れバランスが整う、などの好結果がかなりの割合で得られており、術後のコメントでも、(けっして宣伝でもなんでもなく)「体が軽くなった、気分がスッキリした、周囲が明るく見える」などの反応を異口同音にいただいています。
この「お顔のリフレッシュ気功」は、そういう体験を踏まえたうえで、サークルでも似たような趣旨でやっているものです。
③「笑いのヨーガ」「笑いの気功」
笑う門には福来る、といいますが、これはともかくお腹から大声でアハハと笑う運動です。作り笑いであろうがなかろうが、お腹の底から笑うようにします。すると、お腹が動かされ、胸が動かされ、横隔膜が上下し、さらに顔の筋肉も動かされ、呼吸を深くしっかりすることができます。サークルでも一時期やっていたことがあるのですが、笑いは伝染しますから、みんなでゲラゲラ大笑いです。そして、ハッピーになります。これまで上に述べてきたような諸要素が皆入っていますから、健康にも、免疫力を高めるうえでも、とてもいいように思います。家族とか仲間の人たちと、あまり密集しないようにして、短い時間でもかまわないので、是非やってみてください。
以上、長々と書いてきました。(^_^;)アセアセ
当初は、3月末日までに1回目を出し、その後数回にわけて書く腹づもりにしていたのですが、依然、ウイルスにまつわる事態は流動的で、収束がいつになるかも見通せません。それではと、1回にまとめることにしました。そのため、投稿時期もその分、遅くなってしまいました。長文をお詫びするとともに、是非、適度な運動を、気持ちよく、毎日コツコツと続けてもらって、健康を維持してくださるよう、願ってやみません。
こうしてまとめたことが、何かお役に立ちましたら、幸いです。 m(_ _)m
<過去記事紹介>
38 O脚が5分で治った!?
36 「呼吸」について(続)
35 「呼吸」について
27 夏の暑さに負けない気功法
25 一生楽しめる健康法!
23 三骨軽打法について
21 百病を癒す甩手!
20 練功から煉功へ!
17 結構すごい、ツボの効果!
15 “湿邪”から身を守ろう!
13 猫背を癒す簡単な方法
10 気功的平衡ということ
06 体幹と末梢運動について
05 姿勢美人と中心力
03 静止して動く!
02 “脱力”のちょいヒント