外反母趾と目の下のクマとの関係は?

その体の不調はどこから?見出しボタン 外反母趾と目の下のクマとの関係は?

外反母趾と目のクマ画像

在学時の事例研究・考察の一例。体に現われた変調は、いったいどこから来たのか? そんなことをよく考えては、頭をトレーニングしていた……

<該当者の特徴とコメント>

該当者は、20代の女性。この女性の外見上の特徴と、本人のコメントは以下のとおり。

①左右の足に外反母趾とおぼしき変形部位あり
②右足と左足で変形角度に若干の差あり
③骨盤が外に開き気味
④仰臥した際、伸ばした脚の膝が上に持ち上がる
⑤足の変形部を軽くとんとんと叩くと骨盤(腸骨辺)に響き、本人痛がる
⑥伏臥位では左右の脚長に差があり、右脚が長い
⑦両脚のふくらはぎは外側に張り出しぎみ
⑧脚を揃えた直立姿勢から、腰を下げて坐ろうとするとき、踵が床に着きにくい
⑨過去にバレェ歴がある
⑩目の下にクマがあり、気になっている

<不調の連鎖を推理>

以上を受けて、次のような推理を巡らせた

 ⑨のバレェ歴の経験から、つま先立ちをする習慣があった。ということは、

→ もしかしてつま先にしっかり体重がのらず、母趾の根元のほうにかかるかなにかして、足のMP関節(中足趾節関節)に強い荷重が持続的に働き、その結果として、足の母趾の付け根と小趾の付け根を結ぶいわゆる横アーチが消え、足の甲の幅が広がって開張足ぎみになったのではないか

→ 同時に、足の趾が伸ばされ放しとなることから、足趾の屈筋群(長趾屈筋、長母趾屈筋など)が疲弊し、筋力低下を招いた

→ 開張足で背側骨間筋、底側骨間筋が伸ばされ弛み傾向になると、母趾は反った状態となりやすく、趾先に力が入らず、母趾が(小趾も)萎縮して内側に寄ってきた(①の状態に)

 ①の状態からの帰結として、

→ 体の外側に体重がかかりやすくなっている(⑦③の状態に)

→ その際、左右への重心のかかり方に差が生じている(②⑥の状態に)

→ 体の外側に体重がかかりやすくなると、足が内反しやすくなり(後脛骨筋が緊張)、その起始部である脛骨(後面)と腓骨(内側面)、ひいては大腿骨、骨盤と連鎖して、骨格の位置取りと、関連する筋肉に影響を及ぼす。また後脛骨筋の緊張の持続は、筋力低下や筋肉のこわばりの原因ともなる(そうしたことの一端が⑤の誘引に)

 ⑨によるつま先立ちの習慣からの帰結として、さらに、

→ つま先立ちはまた、足の底屈筋である下腿三頭筋(腓腹筋内側頭、外側頭とヒラメ筋)と後脛骨筋を緊張させ、それが常習化してこわばりが残ると④の状態になる

→ ⑧についていえば、膝を曲げる動作は、脚前面の伸筋群(大腿直筋、中間広筋、内側広筋、外側広筋の大腿四頭筋)を弛め、脚後面の屈筋群(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)を収縮させることにほかならない。また、踵が着くためには、上記の底屈筋が弛み、足関節の背屈筋(前脛骨筋、超母趾伸筋、長趾伸筋等)が収縮する必要がある。立ち姿からスムーズに膝を曲げて坐り、踵をつけるためには、これらの筋肉群がバランスよく働く必要があるが、下腿三頭筋や後脛骨筋等を緊張が残存し、こわばりが常態化してしまうと、この筋肉群のバランス動作を阻害する誘因となりかねない

→ また、下腿三頭筋のこわばりは、全身の血液循環、リンパの流れをも阻害することになり、結果として⑩の状態が表れることになる。いわゆる目の下のクマの一つの原因は血行不良とされ、血流の低下は血液中の酸素の不足を招き、本来赤くてきれいなヘモグロビンが暗赤色に変化し、目の下の非常に薄い皮膚を通して、それが透けて見えるためと考えられる

<施療のポイントは>

以上の推理を受けて、施療としては、次のような点がポイントになってくると考えられる
 外反母趾を中心に施療するのであれば、その部位だけを見て済ませるのではなく、上記に掲げた一連の筋肉群の働き具合、状態、影響被影響の関係等を実地によく調べ、確認したうえで、不調の原因につながる原因部分を探り出し、その大本部分に働きかけて、気・血・水の流れを円滑化させる

 また、日常的にできることとして、足の趾の体操(足趾をやさしく伸ばす、回す、前後に引く、開く……)とか、足をグーパーする(足趾をギュッと縮めてグー、ぱっと開いてパー)ことなども奨励する