その腰の痛みは、目から来ていた!
卒論の研究レポートに掲載した、在学時の体験事例の一つ。腰の痛みの原因が、目という思わぬところにあり、鮮烈な印象として残っている……
<前屈すると痛い、シンが残っている……>
該 当 者: 45歳 女性 該当部位: 腰椎左側
訴 え: 3週間ぐらい前から、背中を反らせる運動をしすぎたためか、腰の左に痛みを感じ始めた。その後、無理をしないようにしていたら、痛みはかなり薄らいできたが、前屈するとやはり痛く、シンが残っているような気がする。これを取ってほしい
<試行~推理~施療>
- 伏臥位で、腰椎から胸椎の棘突起の動揺を診ると、下部腰椎は上を向き、上部は下を向いて、過前彎の傾向が明らかであった
- 左側の側線2を調べると、中枢部にこわばりがあり、その上部の肩甲骨部辺りにゆるみ過ぎがあった
- このゆるみ過ぎを締めると、中枢部のこわばりが消え、姿位を変えても上部のゆるみ過ぎは変わらなかったので、早々とここを主要原因部として定め、指を当てておいた。すると、数分で「腰が軽くなった」との反応が得られ、実際に立って前屈をしてもらうと、「随分、楽」とのことだった
- しかし、念のため腰部を触察してみると、まだ何か硬さが残っているような感触がある
- どうしたものかと思って顔を見ると、右に片噛みの傾向が窺える。聞くと、右でよく噛むとの答え
- 坐ってもらい咬筋をみると、右側にこわばりがある。咬筋停止部の下顎骨に蝶形骨が付着しているのを思い出し蝶形骨を調べると、左から右に動揺しているような感じがあり、さらに頭蓋を診ると、右から左へCCW(反時計回り)の回転傾向が窺われた。筋肉の滑動性検査でもそのことは裏づけされた
- そこで、「目を左のほうに向けてよく見ることがありますか」と聞いたところ、「実は右目が悪くて、頭を右にして左目でよく見る癖がある」との返事
試しに頭蓋を他動的に反対側に動かしてみたところ、ややあって腰の痛みが消えたと言う - 再度腰部を触察すると、確かに、残っていた硬さが取れていたようであった 結局、日常的な目の使い癖が腰椎左側の緊張を絶えず呼び、それが今回の腰痛の隠れた主因として、背中を反らせる運動により顕在化し、強い痛みの症状となって現れたということのようであった
- そこで、日常での目の使い方と片噛みについて注意を促し、施療を終えた
2週間ほど経って、その後の経過を聞くと、メガネを調整したこともあり、それ以来腰の痛みはとれ、再発していないという