肩背部激痛の元を辿ると足裏と中指に!

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施療所開設間なしに一本の電話が。肩甲骨の内側が痛くてたまらない、すぐになんとかしてほしい……。この事例で、経絡の重要性を再認識することに

<激痛が続いて、つらい……>

該 当 者: 50代 女性
該当部位: 主訴は左肩甲骨内側、ほかに腕・手部と、目もときどき痛くなる
訴  え: 3か月ほど前に車で事故。その前から肩こりがひどかったのが、この事故でいっそう悪化。5月の連休中はずっと肩甲骨内側に激痛がひどく、痛み止めの注射と薬で、どうにかしのいでいる。すぐにでも、なんとかしてほしい

<見立て~施療>

お話を伺うと、セールス関連の営業所の責任者をされていて、業績の面でも、人使いの面でも、精神的にいつも重圧を感じていた。好きなお酒でストレスを発散していたが、それも今は痛くて、お酒も飲めず、つらくてたまらない。この施療所には、たまたま知人が(施療所の)外のフェンスの小さな看板を見て、(筋・筋膜療法という)変わったことをしていると教えてくれたので、居ても立っても居られず、昨夜、電話されたとのこと。そこで、筋・筋膜療法について簡単にでも説明してから施療に入ろうとすると、いや、話はいいから、すぐにでもやってほしい、と真剣な眼差しで訴えられ、早速、施療を開始

伏臥位で、肩に触れると、確かにコリがひどく、左肩甲骨内側は軽く触れただけでも痛いという。一見して、左のふくらはぎが外側へずれ、こわばっている。聞けば、脚もずっと痛いとのこと。踵も冷たく、循環不良が窺える。骨盤は、右へ動揺。肋骨下部は左へ動揺。この左肋骨下部から頭方の左肩甲骨内側にかけてコワバリがみられる

左腸骨をみると、頭方へ動揺しており、この部位を他動的に戻すと、左肩甲骨内側の痛みが少しやわらいできて、痛みの箇所も下へ移動しているとの由。左臀部と大転子脇にユルミがあり、それを左脚に辿っていくと、左下腿部から脚の甲側にかけてコワバリ。足の裏側にユルミ。このユルミを締めると、左肩甲骨内側がゆるみ、体の各所の動揺が収まる。そこで、ここを施療ポイントと定め、指あて。すぐに強い拍動があり、20分近く続く

その後、左肩甲骨内側に触れると、楽になってきているが、まだ一部に痛みが残っているというので、さらにみていくと、まだコワバリが残るのを2か所発見。このコワバリを追っていくと、左肩先ユルミ→左上腕部コワバリ→左前腕部ユルミ→手中指撓側にユルミ。この中指を締めると、残りの2か所の痛みも取れるとのこと。聞くと、ずっと左側の肩から腕、手にかけてハリがあり、五十肩のようで辛かったとのこと

姿位を変えても中指のユルミは変わらず、そこでここを二番目の施療ポイントとして指あて。やはり拍動が来る

10分ほどして再度全身をみたところ、当初あった背中のハリは取れており、当初冷たかった足の踵も半ば温かさが戻ってくる。本人も、体の左側全体に温かさを感じるといい、左足裏(経穴でいうところの湧泉)をしてもらったときは、左の背中に流れのようなものを感じ、左手中指(経穴でいう中衝)の際は、痛いところに響く感じがした、とのことであった

施術後の感想を聞くと、体はだいぶマシになった気がするが、施療を受ける4時間前に家で痛み止めの薬を飲んで来たので、そのせいかもしれないとの話。それはそうかもしれないと思い、様子を見てもらうこととする

すると、その晩の7時過ぎに電話があり、「これまでだと、この時間になると、薬が切れて、激痛がするのだが、それがない。全然違う。少し痛みは残っているが、かなりいい状態だ」と、改めてご報告をいただいた。しかも、「実は、明日、病院に入院して治療を受けることにしていたのだが、これなら入院しなくてすみそうだ。そちらで、またみてくれないか」とのこと。入院の話は聞いていなかったので、これにはいささか驚いたが、その後、2日、3日後と立て続けに来院。最初は背筋を伸ばして立つのがつらかったのがある程度自然体で立てるようになり、体もかなり楽になったとのことであった。なにより、表情が随分明るくなったのが印象的であった

<考察> なぜ足の裏と中指なのか
  • 経絡でいう足少陰腎経は、足の裏湧泉から内果の後を巡って、膝の内側から上行して腎に属し、膀胱に連絡する。一枝は腹部正中線の傍らを上り、肝臓に行き、横隔膜を貫いて舌根に行き、別の一枝は肺から心臓に行き、鎖骨下の兪府に至り、手の厥陰心包経に連なるとされる。してみると、下腿外側のコワバリは、脚の内側を通る腎経のユルミを意味するものかもしれない
  • 背中の痛みは膀胱経のコワバリであり、その前面、鎖骨の下部は経絡の表裏をなす腎経の虚を物語るものかもしれない
  • 肩から上腕背面のコワバリは、前面の心包経の虚を意味しており、それが中指につながっている(心包経は、胸中に起こり、乳頭外方の天池から肘窩横紋,前腕前面のほぼ中央を通って、中指撓側端の中衝に終わっている)
  • こういう経絡の流れ、また、腎・膀胱経絡と心包経絡との関係性から考えると、今回の事例が示すように、足の裏の湧泉と中指の中衝を施療ポイントとしたことのつながりもなにやら見えてくるような気がした
  • 目がときどき痛くなるというのも、肝経は腎経の子に当たり、目は肝経とつながりがあるとされるだけに、そうしたことがあっても不思議ではないのかもしれない

いずれにしても、今回の事例を通して、個人的には、これまで比較的筋肉や骨格を中心にみてきたものを、それらにとどまらず、経絡についてもしっかりみていくことの大切さを痛感。これ以降、施療にも積極的に取り入れるきっかけとなってくれたことを感謝している