血圧安定に、顔をさすり耳をもむワケ

血圧安定に、顔をさすり耳をもむワケ

血圧安定に、顔をさすり耳をもむワケ画像

陽気が盛んになる春は、気血が上りやすい季節。血圧安定のためには、顔をさすり、耳をもむといいとされるのだが、その理由は……

「上工揉耳」

舒心平血功がなぜ血圧の安定に良いといわれるのか。その意味合いの一端を先のトピックスでご紹介した。

⇒ 血圧安定と冷え性予防に! 舒心平血功

今回は、ナルホド、そうか! と合点したもう一つのことを述べてみたい。五番目の動作、「上工揉耳」(じょうこうじゅうじ)について、である。

「上工は未病を治す」と言って、本当の名医は病気になる前の段階で早々と治してしまうというのが中医学の伝統的な考え方となっている。そんな上工(名医)が耳を揉む、という名前のついたこの動作では、顔をこすったり、耳をもんだりする。

実際にやってごらんになるとおわかりかと思うが、この動作をすると、なぜか、気分がとても落ち着く。どうしてなのだろう? と思っていたら、東洋医学をかじったことでその理由らしきものが、少し見えてきた気がする。

気血が頭に上り放しになるのを鎮める

細かいことはさておき、東洋医学では、頭部には6本の陽経全てと体の正中を通る督脈と任脈という経絡が走るとされる。つまり頭は、陽気の集合体ともいえるのだが、問題は、この陽気が、上に上ったままで下に降りていかない、そんなケースがあること。舒心平血功をすると体が驚くほど温まり、血流とともに体の気の流れも活発化する気配があるが、気は昇降出入し、体中をバランスよく循環、調和してこそ健康体でいられる。

つまり、気が頭に上ったままではマズイのである。とりわけ、陽気が盛んになる春は、気血が上りやすいといわれるので、気をつける必要がある。ところが、この上工揉耳では、図のように、これら全ての経絡と関連する経穴(ツボ)を軽く刺激したり、触れていく。このことによって、陽気の特徴でもある火のエネルギーを鎮める清熱効果や、体内の陽気が風のように激しく変動して発病の原因となる風邪(ふうじゃ)を取り払う去風効果を期待しているとみられる。

顔と耳のツボ図

血圧、自律神経失調等の特効ツボ

また上工揉耳では、耳の心穴や交感穴にも指で押さえて働きかける。調べてみると、この二つの経穴は耳鍼穴(じしんけつ)といって、鍼灸師が高血圧や低血圧、動脈硬化、自律神経失調、血管拡張作用等に効く経穴として用いているものなのである。こんなことを知ると、ナルホドネ、という気がするではないか。

頚部のこすり過ぎは要注意!

さらに一つ、ナルホド、と思ったことを付け加えておくと、テキスト(「導引養生功」北京体育大学出版社刊)には、上工揉耳をする際の注意点として、低血圧の人などは頚部の両側をこする際に、力を入れすぎず軽く行なうように、と書いてある。

ナゼそうすべきかの理由までは書かれていないのだが、実は、頚動脈の近く(頚動脈洞)には脳に行く血液量等をモニターして血管の拡張等により血圧や心拍数をコントロールする場所がある。したがって、頚部をあまりに強くこすりすぎると、脳は血流が増したとして血管を広げ、血圧を下げようとする。事実、高血圧の持病のある人が、血圧を下げるのにいいと人伝てに聞いて、この場所に強く圧をかけすぎて、血圧がガッと下がり、驚いた、と言っていた。低血圧の人が不用意にこんなことをすると、失神など、とんでもないことが起きかねないのだ。

舒心平血功ではこうした点にも細かく気を配っているのだなあ、と感心した次第である。