春の妖精カタクリさんたち、ありがとう!
やわらかな春の日差しのなかで、ほんの一時期だけ、その可憐な容姿を見せるカタクリ。そんなカタクリの命の営みに触れてきました……
カタクリの自生地、牛沢へ
埼玉県入間市牛沢町はカタクリの自生地として知られています。ニコニコ太一気功のサークル仲間Kさんから、「近くにいい所があるわよ、行かない?」と誘われて、出かけたのが最初。6年ほど前のことでした。牛沢は、サークル会場の武道館から少し足を伸ばせば行ける距離にあります。
実は、カタクリは、埼玉県では準絶滅危惧種に指定されている草花なんです。というのも、市が用意している資料によると、カタクリは北面の落葉広葉樹林帯に植生することがほとんどで、地下水や湧き水で土壌がある程度湿っていて、夏でも土地が低温に保たれていないと生きていけないそうです。牛沢は、秩父山地へと連なる加治丘陵の東端にある雑木林地区で、そういうカタクリの生存環境に合っていたんでしょうね。
可憐な姿に再開!
その翌年以降、Sumと一緒に出かけたこともあったのですが、今年は4月10日過ぎに、たまたま牛沢の近くを通ったことから、久し振りに二人で訪ねてみました。ちょっと遅いかな、と心配したんですが、幸い、カタクリの花に再会!できました。
なにしろこの花が、その可憐な容姿を見せてくれるのは、やわらかな春の日差しのある2週間ほどです。やがて樹々が新緑に覆われ、樹下のカタクリに陽がささなくなる頃になると、既に種を実らせたカタクリは、葉や茎を枯らして地上から姿を消し、暑い夏を休眠。そして涼しくなった秋口から地下で活動を始め、来たるべき春に備えるといいます。
愛おしきスプリング・エフェメラルの花
ですから、私たちがこの花に会えるのは、1年のほんの短い期間だけ。このように、春の一時期だけ地上に姿を現し、あとの長い季節を地下で過ごす草花を総称して、スプリング・エフェメラルって、言うそうです。直訳すると「春の儚(はかな)いもの」、別名「春の妖精」とも呼ばれるそうです。「花の命は短くて…」じゃないですが、この齢になっても、乙女心を刺激してやまない花なんですね。
そんな1年のサイクルを過ごすカタクリですが、さらにさらに、なんと、ちっちゃな芽が一つ出て、一人前に生育して花を咲かせるのに9年ほどの長い歳月がかかるそうです。地下で毎年せっせせっせと養分を蓄えて一枚の子葉が育ち、本葉がようやく二枚になったとき、新しい花が地上に顔をのぞかせるんです。そうした話を聞くと、なにやらいっそう胸が熱くなって、愛おしく感じられてなりません。
カタクリが生きやすい自然環境は、きっと人間にもやさしい
ところで、このカタクリ、地下茎のところからデンプンがとれます。ご存知の片栗粉がそれで、本当の片栗粉は、このカタクリから採取されるものなんですが、希少で高価なことから、菓子料理等に使用が限られ、私たちが使う一般に市販されていカタクリ粉は、実はジャガイモやサツマイモなどのデンプンから採られたものなんですね。
本物のカタクリは、実は薬効もすごいとされ、冷え性や胃腸障害に良いそうです。準絶滅危惧種などといわず、カタクリがその生命の営みを安心して繰り返すことのできるような自然環境が、これからも保全されますように……、そしてその種が日本各地で今後とも栄え続けていけますように……。そういうカタクリが生きやすい自然世界は、人間にとっても、やはりとても大切なものではないかしら……。
心なごませる春の花々たちに感謝!
そんなことをまたもや思いながら、牛沢のカタクリ群生地から、その脇を通っている西武鉄道沿線のほうに視線を移せば、例年のように、咲き誇る桜の花と菜の花が目を楽しませてくれます。自宅への帰り道、あちらこちらで、春の花が出迎えてくれます。いつしかセンチメンタルに傾きつつあった気分もなごみ、なんとはなしに心も明るく浮き立って、口にも笑顔がこぼれ、勇気づけられたような気がしました。
写真は、そんな風景の一コマと、後日、サークル仲間のMさんの庭で拝見した素敵な草花たちです。そこには、カタクリ同様、スプリング・エフェメラルの一種とされる純白のニリンソウもあって、私たちの心に清らかな春を届けてくれました。ありがとう、花々たち!