健康太一ミニコラム:2017年夏号3
今回は、前後の甩手(スワイショウ)のやり方と深層筋の活用法についての、ちょっとしたヒントのご紹介です
14 前後の甩手(スワイショウ)考
太極拳を長らくやっている方と、お話をする機会がありました。
前後の甩手が実は苦手、と仰います。やってもらうと、気になることが幾つか。足の裏の重心移動が上手くできていないこと、腕の振りに力みがみられること、掌(労宮)が向かい合っていないこと、何より呼吸と全身の動きが調和を欠いていること……
一言でいうと、ファンソン(脱力)が充分にできていないようにお見受けしました。
どうすればいいですか、とお尋ねなので、自然な呼吸を大切に、力みを取り、体の中心をよく観てされたら如何でしょうか、とお答えしました。
手を振ろうと力んでやろうとすると、体の外側の表層筋が働きがちになります。
強い表層の筋肉で手を動かそうとすると、体幹がもっていかれて、体幹と手が同方向、足裏の重心位置も手と同方向(手が前のとき爪先重心、手が後ろのとき踵重心)に動き、人によってはお腹で調子をとるように、ギッタンバッコンと動かすことにもなりがちです。その結果、頭が大きく振れ、めまいを起こす原因にもなったりします。
そうではなく、ファンソンし、力を抜いて呼吸と合わせてやっていると、体の中心、深部にあって姿勢を制御する深層筋、いわゆるインナーマッスルが働くようになります。そうすると、手が前に行ったときは、体幹が後ろに引かれ(踵重心)、手が後ろに行くときは体幹が前に出る(爪先重心)、というように、体の軸が次第に安定してきて、そのうち、体幹(深層筋)で(末梢の)手(表層筋)をリードするような動きになってきます。こうなってくると、体はむろん、気持ちも落ち着いて、とてもリラックスした感じで続けることができるようになってきます。
こんな感じで日々、続けていけば、呼吸も落ちつき深まるとともに、仕事や生活の場でどうしても偏りがちな脊柱の歪みも段々と是正され、本来あるべき姿に近づいていけば、脊椎を通る中枢神経や末梢神経の働きも良くなりますから、体全体が協調し、整ってくることが期待できるのではないかと思います。これこそが、甩手がもつ大きな効用なのではないでしょうか。
現代人はややもすれば、筋肉主体で、体を強く、激しく動かそうとしがちです。そうすると、筋力の強い表層筋が前面に出て、深層筋の働きを弱めてしまいがちです。もっと体幹の深層筋を上手く使えるようになれば、動きの質も様変わりするのではないでしょうか。甩手はそのためのとても良い方法だと思いますので、大いに活用したいものです。
なお、体を動かすことの一つの見方として、別稿に関連記事を投稿しましたので、よろしければ、こちらもご覧ください。