筋肉と骨の変調が連鎖して広がる仕組みとは
体の不調をみる際は、症状部位のみをみるのでなく、筋肉と骨の変調の連鎖を広くみて、根本の原因にアプローチするようにしたい……
タイチ・トピックスの中で、体を動かすやり方として、筋肉を主体にするのか、骨を主体にするのか、二つのアプローチ法があることを触れた
その主旨は、体を動かすにあたっては、筋肉、筋肉と、筋肉ばかりに焦点を当てるのではなく、もっと骨に着目して、人間の体の中心にあって姿勢を制御し安定を保つ深層筋、いわゆるインナーマッスルを活用して、表層筋の過度の(あるいは無駄な)使用を避ける、そんな体の賢い使い方をしてみてはどうだろうか、というものだった
今回は、それとは別に、筋肉と骨の相互作用という観点から、少し述べてみたい
いまある痛いとか苦しいという症状は、いったいどこから来ているのか
というのも、体の不調をみていくときに、この筋肉と骨の相互作用がどう働き、影響し合っているのか、それも、単に特定の骨や筋肉に止まらず、一つの筋肉や骨の変調や歪みが、関連する骨や筋肉にも次々に波及、連鎖してどう広がっていっているかをみることは、体の不調を癒すうえで欠かすことのできない視点と思われるからである
いま現にある痛いとか苦しいという症状は、元をただせば、いったいどこから来ているのかを探る重要な手立てともなるだろう
筋・骨連動図試案
以下の図は、そんなことを思いつつ、気功・整体学校で学んだときに、「筋・骨連動図」として先述のタイチ・トピックスでまとめた試案の続きである
図1は、左の筋肉がゆるんで柱が倒れ、柱が倒れて右の筋肉がゆるんだ模式図である。この場合は、<筋→骨→筋>と、連鎖していっていることになる
図2は、筋肉にゆるみとこわばりが生じ、間の柱が倒れた場合である。これは、<筋→骨>で、筋肉主導の動きといえる
図3は、柱が倒れて筋肉にゆるみとこわばりを生じたケースである。これは、<骨→筋>で、骨主導といえる
図4は、右の筋肉が収縮して柱を倒し、倒れた柱が左の筋肉を緊張させた例である。これは、<筋→骨→筋>と連鎖していっていることになる
図5は、ちょっとややこしいが、bが倒れてb~cがゆるみ(bが影響、b~cは被影響)、a~bが緊張した(bが影響、a~bは被影響)例である。これは、<骨→筋>で、骨主導の動きといえる
しかし、もしbを倒したものが他にあるとなると、話は変わってくる。たとえば、関連筋のb~dにゆるみがあって、それがb~eのこわばりを生み、なおかつそれがbを倒したとなると、b~dが影響、他は被影響ということになる。これは、<筋→骨→筋>と連鎖した筋肉主導の動きになってくる
影響、被影響の関係を、よく考察する
このように、骨と筋肉は、その相互作用によって、いろいろ複雑な影響、被影響の関係を生じさせる。したがって、骨が動揺するときは、付着する筋肉のこわばり、ゆるみ過ぎを必ず確かめる必要があるし、筋肉に変調(こわばり、ゆるみ過ぎ)があるときは、関節をまたいだ先の筋肉についてもこわばり、ゆるみ過ぎを必ず確認し、影響、被影響の関係を、よく考察することが必要になる
こう考えてくると、体の不調をみる際、いま現にある痛いとか苦しいという症状だけをみて、それに対処療法を施すのは、ある意味手っ取り早くて簡単ともいえなくはないが、やはりそれだけでは不十分なケースも出てくる。体全体をみて、そこから、もっとその元にある原因を見出してアプローチするやり方は、その分手間暇がかかることにはなるが、より根本的な施療に近づけるやり方といっていいのではないかと思う
さて、今回は、これまでと趣きを変えて、いささか理屈っぽい話になってしまった。何かよくわからない、という方もいらっしゃるかもしれないので、次回は、もう少し具体的な話として、筋・骨連鎖を辿った、わりあい初期の施療の事例を記録として残しているので、それを紹介してみたい