体を中心から活性化し、元気にする三骨軽打法

体を中心から活性化し、元気にする三骨軽打法

 体を中心から活性化し、元気にする三骨軽打法画像

日本生まれの柔軟運動――それは、心身を中心から活性化し、生命力を高めるのによいと思われるものだった

日本生まれの柔軟運動

三骨軽打法という日本生まれの柔軟運動があるのをご存じだろうか。

肥田春充さんというと、フツー一般の人にはあまり馴染みがないかもしれないが、武術愛好家や健康に関心をもつ人の間では”強健術”の創始者として、よく知られた人物であるようだ。

三骨軽打法は、この明治から昭和の時代を生きた肥田春充さんによって、創案された。

生まれつき虚弱な体質でやせ細っていた肥田さんは、これではならじと、あるとき一大決心をし、それこそ全身全霊をかけて、心身改造に取り組む。

そして、見事、頑健な体づくりに成功するばかりか、明晰な頭脳と高い精神性までも備えるに至る。

肥田春充写真01

見事な体躯へと変貌を遂げた、若き日の肥田春充さん(写真は『聖中心道 肥田式強健術』より)

貴重な体験と練習法の詳細を記した文献が……

そんな話を、今から数年ほど前、人伝てに知り関心をもって調べてみると、なんと、そうした肥田さんの貴重な体験と、命を賭するようにして実践のなかで磨き、築き上げてきた練習法の詳細をまとめた書籍の数々が、国立国会図書館のデジタルライブラリー(現在はデジタルコレクション)で無料で目にすることができるという。

早速、入手して、引き込まれるように読んだのが、『聖中心道 肥田式強健術』である。900p近くにもなる大著(拡大復刻版)だが、この中に練習法として十数種が挙げられている。

そんな数ある練習法のなかで、とりあえずやってみようと魅かれたのが、三骨軽打法である。

整体を志して以来、体を柔らかくすることにずっと興味を持っていたし、三骨軽打法の動きが、気功や太極拳の方法論と本質のところで、どこか近いものがあるように感じられ、また、整体を勉強してきた者として、理に叶ったやり方のように思えたのである。

いかにも気功的、太極拳的な動き……

三骨軽打法では、全身を柔らかくし、目を見開き、前方に視線を定め、姿勢を正しくして構え、運動を行なう。

これは、放鬆(ファンソン)して、天と地の間に自己を真っ直ぐに置き、心を安らかにして動く気功、太極拳とよく似ているようである。

腕を力を頼りに振り回すのではなく、腰を自然に旋回して、腕を振り上げたり、腕を脱力して手の重みで頸に下ろしたり、腰の前、後ろに回したりして行なうやり方も、いかにも気功的、太極拳的であるように感じられる。

では、このとき、その元となる推力はどこから来るのかというと、多分、踵に交互に自重を載せることで生まれる大地からの反作用力ではないかと想像されるのだが、どうだろうか。

中枢神経系を心地よく刺激

そうして三骨軽打法では、頸骨、仙骨、腸骨の三骨を叩き、脳神経、脊髄神経、仙骨神経叢に心地よい刺激を与えて賦活する。

これは、背骨の中を中枢神経である脊髄が通り脳と連絡するとともに、その脳脊髄からは末梢神経が枝分かれして全身に分布して人の生命機能を統括していることを考えれば、ナルホド! と納得のいく話のように思える。

余談ながら、整体手技には、クラニオセイクラルというものがある。クラニオは頭蓋骨、セイクラルは仙骨のことで、この頭蓋骨と仙骨を結んで流れる脳脊髄液に働きかけて心身を整え癒していく。

やはり脳と脊髄に着目して人の生命力を高めていくところが、どこか似通ったようにも思える。

You Tubeに動画をアップ

で、三骨軽打法であるが、こう申し上げても、文字だけではやはりチンプンカンプンであろうから、You Tubeに動画をアップしておいた。拙(つたな)い動きであまり参考にならないかもしれないが、とりあえずどんなことをするかはわかっていただけると思う。

⇒ 三骨軽打法をやってみました!

注意点は……

ただ、やってみて思ったのは、この方法は、体がある程度練れ、ほぐれた状態でやったほうがいいだろう、ということである。

テロップにも書いたとおり、肩や肩甲骨、あるいは腰回りの筋肉や関節などがかなりほぐれて無駄な力が抜けていないと、なかなか思ったように体が動いてくれない。

それを、固い体で、無理やり力んでやると、頸骨、仙骨、腸骨を叩くので、大変危険ですらある。この点は、くれぐれも注意が必要だと思う。

また、やり過ぎもよくない。先の『肥田式強健術』によれば、左右の動きを1回として、計5回でOKと書かれている。

アップした動画では、春、夏、秋、冬と季節ごとに概ね1分を割り当ててやっているから、これでは論外に長いといえる。

しかし、気持ちのいいリズム運動でもあるので、ついつい調子にのってやり過ぎたりする。筆者も甩手の一環として軽く軽く、楽にやるようにしているのだが、ある時調子に乗って、長くやったらどうなるかと思って8分ほど続けると、さすがに頸や仙骨への刺激量が過大で、頸と仙骨にジワ~ンとした違和感が残り、続いたことがあった。やってみようと思われる方は、くれぐれも無理をされないよう、注意してほしい。

実は、この三骨軽打法、ニコニコ太一気功サークルでも、脱力練習や甩手等の延長線上のものとして、一時期カリキュラムに入れ、やってみたことがある。今は、むしろ、その前段の、脱力練習や甩手、推手の予備功により重点がいっているが、先述のように、体がある程度練れ、ほぐれた状態になってきたら、やってみることをお勧めしたい。

感じられる素晴らしい効果

三骨軽打法は、やれば体が温まり、柔軟性も高まり、姿勢もよくなって、心身ともにシャンとする。そんな効果が期待できるように思う。

肥田春充写真02

肥田春充さんは、中心力を養成することの大切さを説いて止まなかった(写真は『聖中心道 肥田式強健術』より)

心身を中心から活性化し、生命力を高める功法として、動画の背景にも描いているように、春、夏、秋、冬、継続は力なりの精神で、コツコツと気長に、個人的にも楽しみながらやっていきたいと思っている。