健康太一ミニコラム:2018年秋号1
今回は、脾(膵臓)や胃というお腹の調子をよくする気功法の紹介です。日々の健康づくりの一環にお役立ていただければ幸いです
28 「脾」の季節に役立つ気功法
前回、夏の暑さに負けない気功法を取り上げました。
その暑い夏に続く「土用」の季節は、消化吸収等をつかさどるお腹の問題があれこれ起きやすい時期でもあります。
というのも、下記ニコニコ太一通信にも書いたように、東洋医学の五行論では、土用の季節は「脾」が配当され、その脾の性質は“湿”。夏の“火”に対しては“土”です。熱せられた大地に夏の雨が吸収され、湿に変化し、それが畑の作物の栄養を育むとされます。
その脾の位置は、人間の体でいえば、お腹、中央です。そして臓器的にいえば、お腹である脾、胃(脾と胃は姉妹経絡)は、心と肺、肝と腎に周りを取り囲まれた中にあって、そこで育んだ栄養物質をこれら四つの臓器に輸布し、体全体を養います。
脾、胃がうまく働かないと体全体に不調が……
しかし、何らかの原因でこの脾、胃の働きが阻害されてしまうと、体中に様々な影響が及ぶことになります。
たとえば、体が重だるい、脚に力が入らない、下肢の痛みや浮腫、胃部の膨満や腹鳴、消化不良、食欲不振、下痢、便秘、鼻血、心悸亢進、頭重、口の周りの発疹、血色不良や出血症状、さらには筋肉痛などなど。
そこで、そんな悩みや不調に巻き込まれることなく、この季節にうまく適応していけるよう、今回は、以下、「脾」の働きを高めるのに役立つ気功法を、二つ、ご紹介していくことにしましょう。
健身気功呼(ホー)字訣
まずは、前回も「夏の暑さに負けない気功法」のなかでお伝えした『健身気功六字訣』の中から――「呼(ホー)字訣」を。
やり方は、両手掌心をお腹を温めるようにお臍の前10センチほどに置き、その姿勢から、口を丸く舌を上に巻き、喉からホーと息を吐きながら発声し、膝を弛めて腰を落とし、お腹の前で綺麗な玉を抱きかかえるようにします(両掌心とお臍の距離はそれぞれ等間隔)。
それから、大地を踏んでゆっくり立ち上がりながら、両手をお臍に近づけ、最初の姿勢に戻り、以上を計6回します。
こうすることにより、脾と胃にこもる濁気が排泄され、また両手をお臍との間で開いたり閉じたりすることで、胃腸の働きが活発化、消化吸収の促進や便秘の予防等に効果が期待できるわけです。
健身気功八段錦第三式
脾胃を健康、活発にするやり方は、この他にもいろいろあるのですが、ここでは、同じく「健身気功」のなかの「八段錦」から、もう一つ、ご紹介しましょう。
健身気功八段錦は、2010年秋から約半年間ニコニコ太一気功サークルでも取り上げて皆で学んできましたから、懐かしく思われるメンバーの方もいらっしゃるでしょうが、その中の第三式「調理脾胃須単拳」というのが、その方法です。
八段錦のいいところは、式の名称に動作と効能が簡潔に示されているところです。この第三式では、その名のとおり、脾胃を調えるには片手を上げるといいですよ、と教えてくれています。
やり方は、下図にあるように、両腕を弛めた状態から、片手の掌心を上へ、他方の掌心は下に向け、ともに掌根に力を入れて推し広げ、胸をのびやかにし、体、腰脊を伸ばすようにします。これを左右を1回として、計3回します。
たったこれだけの簡単な方法ですが、これにより腹腔が気持ちよく伸ばされ、お腹をマッサージする効果がありますし、また、背部の兪穴を刺激することにもなります。背部兪穴というのは、背骨の左右に沿ってある、各臓腑と関係するツボで、ここに適当な刺激を与えることにより、臓腑の不調に効があるとされます。ちなみに、脾兪と胃兪は、それぞれ第11、第12胸椎の棘突起の下の横辺りにあり、その上部には胆兪や肝兪など、下部には腎兪などの兪穴があります。
夏から秋へ季節が移りゆくなかで、日々を健康に明るく過ごすことのできるよう、是非やってみてください!